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ピアプレッシャー
[ピアプレッシャー]

お互いに監視しあう水平管理の強い組織では、周囲との和や全体の利益を重んじ、誰もが集団で認められた規律や価値観、行動様式に従わなければならないとする同化圧力が働くことがよくあります。これを「ピアプレッシャー」と呼びます。ピア(peer)は、英語で「仲間」「同僚」の意。ピアプレッシャーとは、自らが所属する集団のメンバーや職場の同僚など、同じ立場の仲間からの監視によって生じる心理的圧迫感のことです。

ピアプレッシャーのケーススタディ

相互監視の空気を生み、ストレスの温床に――?
不足するとパフォーマンスを下げる面も

「仲間が残業しているのに、自分だけ早く帰るわけにはいかない」「この仕事が遅れたら、チームの全員に迷惑がかかってしまう」――組織で働くビジネスパーソンなら、こうした心理にさいなまれ、職場での周囲の視線にプレッシャーを感じることは決して珍しくないでしょう。学校を卒業して企業などに就職した場合、職場に組み込まれ、集団の一員として組織社会化が進めば進むほど、「ピアプレッシャー」と呼ばれる仲間や同僚からの精神的重圧を受けやすくなるといわれます。

競争より仲間の和を重んじ、会社全体の利益のために社員が力を合わせる。ベテランが若手を育て、達成した成果は全員で分かち合う。従来、日本企業はそうした家族主義的な経営を成長の源泉としてきました。製造業やサービス業などに顕著な日本企業ならではの“現場力”の高さも、このシステムの賜物(たまもの)といっていいでしょう。

しかし自律性が高く、統率とチームワークに優れた現場は、一方で相互に監視しあう「水平管理」を生み、ピアプレッシャーが強まる傾向にあります。周囲の目を意識するあまり、過剰適応して働き過ぎたり、たえず緊張を強いられたりするなど、職場全体としての業績は上がっても、個人にとってはストレスの温床になっているケースが少なくありません。こうした傾向が強まると、一人ひとりは誰も長時間労働を行いたいなどと思っていないのに、「早く帰るのは裏切り」というような雰囲気が醸成され、結果として職場環境が“ブラック化”することになりかねません。休暇制度や出産・育児関連の支援制度など、会社がワーク・ライフ・バランス推進のためのしくみを整えているにもかかわらず、成果が上がらない職場には強いピアプレッシャーが作用している可能性があります。

とはいえ、ピアプレッシャーには相互監視だけでなく、助け合いや切磋琢磨(せっさたくま)といった面もあるだけに、職場から失われてしまうと、組織のパフォーマンスがかえって上がらなくなることも考えられます。現在、日本企業においては、ダイバーシティー(多様性)の推進が課題であるといわれますが、多様性という言葉の本質を取り違えて、“他人は他人、自分は自分”という誤った個人主義や他者への相互無関心の風潮が職場に横行することは、厳に避けなければなりません。ダイバーシティーを担保しつつ、健全なピアプレッシャーを活用して真のチームワークを構築する――組織マネジメントには、そうした配慮や工夫が求められています。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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