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4.メンタルヘルスにおける会社と管理職の責任と対応

(1)求められる安全配慮義務

●実効が伴っていなければ、会社は責任を問われることに

労働契約上、会社と管理職は従業員に対する安全配慮義務を負っている。近年はメンタルヘルス不調者の増加を受けて、相談窓口の設置などを講じる企業が増えているが、それだけで安全配慮義務を果たしているとは言えない。過去の判例でも、従業員の長時間労働や健康悪化を知りながら、具体的な業務軽減措置を取らなかった企業の安全配慮義務違反を認めたケースがある<川崎製鉄(水島製鉄所)事件:岡山地裁、平成10年2月23日判決>。形だけのメンタルヘルス対策を導入しても、実効が伴っていなければ会社はその責任を問われることになるのだ。

会社が安全配慮義務を問われるのは、従業員の健康悪化や自殺という結果を予見できた場合、あるいは予見し得る立場にあった時である(予見可能性)。結果の発生が予見できたにもかかわらず、会社がそれを放置して(業務軽減などの措置を取らなかったなど)、従業員の健康悪化や自殺などの重大な結果を招いた場合には、会社は「結果回避義務」を果たさなかったものとして、安全配慮義務を問われることになる。

(2)配置転換、降格、休職命令の可否

●人事裁量権の範囲内であれば、配置転換・降格などは可能

精神障害を発症した従業員や精神疾患で休職した従業員が復職した際、それまでの業務とは異なる、より軽易な業務への配置転換を行うことは、会社の人事裁量権の範囲内であれば、問題はないと思われる。ただし賃金を減額する場合は、本人との同意、または就業規則などの定めが必要である。

また、資格制度上の等級を降格できるかどうかは、資格制度がどのように設計されているかによる。例えば、過去の判例を見ると、メンタルヘルス不調が「勤務成績の著しい不良」などの就業規則上の降格条項に該当すれば、評価者の裁量権の逸脱がない限り、違法とはならないというケースがある<マナック事件:広島高裁、平成13年5月23日判決>

●本人同意・就業規則等の根拠規定に基づき、休職させることは可能

従業員が精神疾患などで労務の提供が困難になった場合、企業は休職を命じることになる。ただ、休職中は賃金が支払われないなど、「不利益措置」が伴う。そのため、休職を命じるには、本人との合意、または就業規則等の根拠規定が必要となる。なお、休職期間中の賃金については、就業規則の定めによるが、「ノーワーク・ノーペイの原則」から、無給としても差し支えがない。

(3)メンタルヘルス不調者に対する復職支援

●職場復帰プログラムを設定し、職場復帰を果たしている企業はまだそれほど多くない

イメージ休職期間中の従業員に対する職場復帰支援は法的な義務ではないが、会社の積極的な支援が期待されている。例えば、厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」によると、職場復帰支援は五つのステップから構成されている。しかし、この手引きに基づき、現実に職場復帰プログラムを設定し、職場復帰を果たしている企業はまだそれほど多くない。メンタル不調者の回復状況の把握や復職判定、復職時の職場調整、周囲の関与のあり方、復職後の症状悪化による再休職などが課題として表面化しているからだ。

【職場復帰支援の五つのステップ】
第1ステップ 病気休業開始、休業中のケア
第2ステップ 主治医による職場復帰可能の判断
第3ステップ 職場復帰可否の判断、職場復帰支援プランの作成
第4ステップ 最終的な職場復帰の決定
第5ステップ 職場復帰後のフォローアップ

今後は正式な職場復帰決定の前に、例えば「試し出勤制度」などを設けることが必要になると思われる。そうすれば、より早い段階で職場復帰の試みを開始することができる。また、休業していた労働者の不安を和らげ、労働者自身が職場の状況を確認しながら、復帰の準備を行うこともできる。

「試し出勤制度」の導入に当たっては、処遇や災害が発生した場合の対応、人事労務管理上の位置づけなどについて、事前に労使間で十分検討し、ルールを定めておくことが必要だ。

【試し出勤制度の例】
模擬出勤 勤務時間と同様の時間帯に、デイケアなどで模擬的な軽作業を行ったり、図書館などで時間を過ごす
通勤訓練 自宅から勤務職場の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に、帰宅する。
試し出勤 職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する

●職場復帰前後の留意点

休職者が復職を申し出た場合、現場の上司が勝手に判断するのではなく、社内の関連部署(人事部、産業保健スタッフなど)と連携を取って、組織的に復職可否の判断を行う。復職可否の判断のプロセスでは、主治医や産業医との連携も必要だ。また、職場復帰後の業務軽減措置などについては、本人と人事スタッフ、上司が主治医と面談して助言をもらうのが望ましいだろう。

復職させる職場は、休職前と同じ職場が原則である。本人にとって、環境変化自体が精神的負荷・ストレスになるからだ。ただし、休職前の職場の上司・同僚や業務内容がメンタル不調の原因となっていた場合は、他の部署への異動も検討しなければならない。

メンタル不調で休業していた従業員に対しては、当面、できるだけストレスをかけないことが望ましい。また、従業員から業務軽減を求められなくても、会社として一定の就業上の配慮を行うことが安全配慮義務を果たす上でも重要だ。いずれにしても、復帰後は労働負荷を軽減し、段階的に元に戻すなどの配慮が求められる。具体的には、以下のような例がある。

【就業上の配慮の例】
  • 短時間勤務
  • 軽作業や定型業務への従事
  • 残業、深夜業務の禁止
  • 出張制限
  • 交替勤務制限
  • 危険作業、運転業務、高所作業、窓口業務、苦情処理業務などの制限
  • フレックスタイム制度の制限、または適用
  • 転勤についての配慮 など

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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