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逆パワハラ
[ギャクパワハラ]

一般にパワハラというと、職務上の地位などを背景に上司から部下に対して行われるハラスメント(精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為)を指すのに対し、「逆パワハラ」とは、部下から上司、後輩から先輩、非正社員から正社員など、管理される側から管理する側に対して行われるいじめや嫌がらせ行為のことをいいます。2012年に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」がまとめた報告書では、部下から上司への行為もパワハラに含まれると定義されています。

逆パワハラのケーススタディ

経験や知識、人数の差で上下関係が逆転!?
上司は指導・監督権限を適切に行使すべき

厚労省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」が提唱する定義によると、職場のパワーハラスメントとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」を指し、「上司から部下に対して行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間などさまざまな優位性を背景に行われるものも含まれる」としています。たとえ職位や社歴が下の立場であっても、現在の部署における経験年数や実績など、上司・先輩に対する何らかの優位性を“パワー”として嫌がらせに及ぶのであれば、それも職場のパワハラにあたるというわけです。このケースをとくに「逆パワハラ」と呼びます。

もちろん被害が把握されているかぎりでは、上司から部下へのパワハラ件数が圧倒的に多く、同省が2012年度に行ったアンケート調査(複数回答)では、パワハラの加害者と被害者との関係は「上司から部下へ」が77.7%を占めました。しかし少数とはいえ、「部下から上司へ」が1.3%、「正社員以外から正社員へ」という事例も1.8%ありました。例えば部下が気の弱い上司や先輩に対してあからさまに反抗的な態度を示し、声をかけても無視したり、業務上の指示や指導に従わなかったりする場合、逆パワハラにあたる可能性があります。特にIT業界では、知識・技術面で部下や後輩が上司よりも勝っていることが珍しくないため、上司もなかなか強い態度に出られないケースがあり、実際に厚労省にも報告されているようです。また、ごく少数の正社員で非正規雇用のスタッフを管理しているような職場は、パートやアルバイトに経験豊富なベテランが多く、彼らが働いてくれないと業務が回らないという弱みもあって、しばしば上下関係が逆転しがち。正社員いじめの温床になりかねません。

逆パワハラも通常のパワハラ行為と同じく、被害者(上司)は加害者(部下)に対して被った精神的苦痛の賠償を求めることができますし、上司が会社に事態を報告し、適切な支援を求めながら得られなかった場合は、会社に対しても安全配慮義務違反を問うことができます。しかし、逆パワハラと部下が被害者のパワハラとでは、決定的な違いがあります。それは、上司には部下に対する“指導・監督権限”があるという点です。

被害者である上司がその権限を適切に行使すれば、逆パワハラの問題にはマネジメントの問題として解決できる余地が少なくありません。原則として、上司の指示を聞かない部下は服務規律違反ですから、上司には指導・監督権限に基づいて、まずはパワハラ行為を止めるように部下を指導することが求められるわけです。それでも従わない場合は上長や人事部に報告し、懲戒まで視野に入れた毅然(きぜん)とした対応をとるべきでしょう。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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