仕事と介護の両立支援
仕事と介護の両立支援~法改正で企業に求められること、その対策について~
今年5月に育児・介護休業法が改正され、来年4月より、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化として、介護に直面した従業員への個別の周知・意向確認、介護に直面する前の早い段階での情報提供、雇用環境整備等の措置が義務づけられます。
仕事と介護の両立支援に関しては、2015年に厚生労働省から対応モデルが示されています。その内容は、従業員の仕事と介護に関する実態把握、制度設計・見直し、介護に直面する前の従業員・介護に直面した従業員への支援、働き方改革とされています。
すなわち、今後は、「仕組みや環境の整備」と介護に直面した従業員とその予備軍への「個別の対応」の両面の体制構築が必須となってくると言えます。
仕組みや環境の整備に関しては、組織に関わるものであり、法律や制度、組織としての決めごとになるため、組織全体の枠組みとして整備・構築していくことになります。
一方で、個別の対応に関しては、特に介護に直面した従業員に対して、管理職や人事担当者が個別に対応していくことが必要となってきます。
介護に直面した従業員への個別の対応については、厚労省より、(1)相談・調整期、(2)両立体制構築期、(3)両立期の3段階によるサポートが推奨されています。管理職や人事が従業員への個別面談を実施し、介護支援プラン(「仕事と介護の両立支援面談シート」)を作成し、プランに基づいて対応していきます。支援プランの作成にあたっては、介護状況の確認、制度などの情報提供、働き方の確認・従業員の希望、業務調整について話し合う必要があります。場合によっては休業・復職対応、従業員の体調の確認も含まれてきます。また、(2)と(3)は繰り返すこともあり、継続的なサポートが必要となってきます。
3段階によるサポートや面談シートなどの活用により、いつ何について話し合うのか、取り組まなければならないのかは明確になっています。
しかし、介護に直面している従業員への対応は、構造的・形式的な対応ではなかなか難しいと考えられます。
その理由としては、介護の問題はプライベートな問題や個人的要素による課題が少なくないこと、介護状況や従業員の置かれた環境も様々であること、介護状況は変化しその変化は一定でないことや先が見えづらいこと、介護は精神的・身体的負担が大きくメンタル不調にも繋がりやすいことなどが挙げられます。
従業員のプライベートな問題は、従業員自身どこまで会社に伝えるべきか、話すことができるのか悩みますが、企業側もどこまで踏み込んで良いのか悩ましい部分ではないでしょうか。介護状況や従業員の置かれた環境によって、社会資源などの情報収集・情報提供を実施する際の知識やスキルの取得も容易なものではありません。状況によっては従業員が休業を取得することもあるため、休復職対応が必要となり、働き方や職場環境の調整を含めた従業員への継続的なサポートが必要となります。時にはメンタル不調を理由とした休職や離職に繋がらないような早期の対応も必要となってきます。その時々の状況によって対応は様々で、時間と労力を要します。
以上のことから、仕事と介護の両立支援における個別対応に関しては、自社内で対応することは負担が大きいと感じられていることもあると思います。介護についてある程度知識を持ち、また、不調に対して適切な対応ができる、直接利害関係がない外部の専門家を活用しながら介護と仕事の両立支援を推進していくことも考えてみてはいかがでしょうか。
キューブ・インテグレーション株式会社 シニアコラボレータ― | |
公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタント/CEAP(国際EAPコンサルタント)
【専門領域】産業精神保健、危機介入 医療機関や教育機関にカウンセラーとして従事。その後、EAP事業会社にて、人事・管理職・産業保健スタッフへのコンサルテーションや組織介入を中心に企業のメンタルヘルス支援に携わる。他、大学のハラスメント相談員、再就職支援会社のスーパーバイザー。 |
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