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レジリエンス
[レジリエンス]

「レジリエンス(resilience)」とは、日本語にすると「弾力性」や「回復力」「しなやかさ」を表します。もともと心理学で使われることの多かった言葉ですが、予測が困難で変化の激しい近年、教育現場や組織においてもレジリエンスの強化が求められています。

 

それぞれの局面によってニュアンスは異なりますが、総じて、逆境や困難な状況を乗り越える「回復力」として使われます。

 

心理学においては、トラウマを抱えていたり、仕事や家庭環境などの人間関係が悪化することで生じる過度なストレスを感じたりしたときに、それらをはねのけて心理的に回復する過程を示します。時には、その過程を経て精神的に成長するまでを含むこともあります。

 

ビジネスにおいては、「組織」を対象とするレジリエンスと、「従業員」を対象とするレジリエンスという二つの異なる観点があります。

 

組織におけるレジリエンスは、災害など不測の事態が起きた際の復旧力といった、BCP(事業継続計画)の側面と、イノベーションやデジタルトランスフォーメーション(DX)、ダイバーシティなど変化する環境に対応できる組織の柔軟性として捉える側面があります。従業員におけるレジリエンスは、個々人のストレス耐性や精神的な安定度合い、課題解決能力などが挙げられます。

レジリエンスに期待できるメリット

1)逆境においても落ち着いて対処できる

仕事で何かトラブルや問題が発生した際、レジリエンスの高い従業員は、慌てずに落ち着いて対処することができます。目の前の状態を冷静に把握することで、状況に応じて最適な判断を下し、解決に導きます。また落ち着いて対処することで、周りに対してきつい言葉を使ったり、不機嫌な態度になったりするケースも減らすことができ、結果的に職場の雰囲気も良くなります。

2)問題が起きた際に素早く立ち直れる

レジリエンスが高い組織は、トラブルや問題があってもすぐに立ち直ることができます。例えば、自然災害などが発生した際も、あらかじめ定めたBCPマニュアルに基づき、スピード感を持って通常業務に戻れます。

3)変化に柔軟に対応できる

現代は、IT(情報技術)の普及や技術革新により、過去の成功体験が通用しなくなりつつありますが、レジリエンスを高めることで、変化に強く柔軟性の高い組織をつくることができます。競合や消費者の変化に応じてビジネスモデルを変革することは、事業の継続や成長性の維持につながるでしょう。従業員は、自分が組織に求められる役割に応じて柔軟に変化・変革することで、成長へとつなげることができます。

4)従業員の心身の健康を維持向上できる

「組織」や「従業員」の観点でレジリエンスの理解を深め、それを維持・向上できるような仕組みや環境づくりを行うことは、従業員の心身の健康を保つことにもつながります。フラットで風通しの良い職場、テレワークに対応できる柔軟な勤務形態やシステム、キャリア支援などは一例です。こうした環境づくりを積極的に行うことは、人事部にとって大きな仕事の一つといえるでしょう 。

レジリエンスが注目を集める背景

レジリエンスに注目が集まる理由について、四つの観点から解説します。

1)VUCA時代の到来

VUCA

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の四つの頭文字を取った言葉です。1980年代からある言葉ですが、2010年代に入ってから、ビジネスシーンでも「予測困難な時代」として頻繁に使われるようになりました。

自然環境の変化やテクノロジーの進化によって将来を予測することが困難な現代では、過去の成功体験にとらわれることなく、起こった変化に柔軟に対応し、困難や逆境を乗り越える力が求められています。

2)労働者のメンタルヘルス問題の深刻化

日本では経済・産業構造の発展に伴い、職場におけるメンタルヘルスの問題が顕在化するようになりました。こうした問題を受け、労働省(現・厚生労働省)は2000年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を提示し、2015年には労働安全衛生法の改正により従業員50人以上の事業場に対して自身のストレスを測る「ストレスチェック」が義務化されました。

また、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正法、通称パワハラ防止法が2020年6月に施行されています。コロナ禍における急な労働環境の変化によって、メンタルヘルスの不調を訴える人も多く見受けられています。

3)労働力不足と人生100年時代の到来

日本の少子高齢化が加速度的に進み、将来の労働力不足が懸念される一方、医療技術の向上などにより健康寿命が延びたことで、人生100年時代が到来するといわれています。

100年という長い期間活躍するために、生涯にわたる学び直しや、新たな技術・スキルの習得、雇用形態の見直しなどが議論されています。また、このような労働環境の変化に対して企業、社会、従業員がしなやかに対処できるような仕組みづくりも必要です。

厚生労働省は「『人生100年時代』に向けて」と題して、高齢者から若者まで多くの人が元気に活躍できるような国づくりを目指すと発表しています。

4)新型コロナウイルス感染症の拡大

新型コロナウイルス感染症は、上述のVUCA時代を象徴するような出来事といえます。誰もが予測できなかった事態であり、暮らしやビジネス活動は大きな変革を余儀なくされました。感染症の拡大によって、対面での営業活動などが制限され、外出自粛のため消費者の行動はオフラインからオンラインに移りました。

このような中、企業には時代に適した組織づくりが求められています。従業員においても、働き方や人生設計を大きく見直す必要があるでしょう。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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