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専門家コラム

メンタル不調(うつ病)への対処法 シリーズ5

2025-03-14 テーマ: メンタルヘルス

みなさん、こんにちは。株式会社ヒューマン・タッチの森川です。

前回は【メンタル不調(うつ病)への対処法 シリーズ4】として、「安全配慮義務」について、お話しさせていただきました。今回は、【シリーズ5】として「職場でなすべき安全配慮義務」について、話題にさせていただきます。

  • 「職場でなすべき管理職の対応」

前回、安全配慮義務は管理職に課せられた義務である旨お話しさせていただきました。では、具体的には職場で何をどのように実践すればよいのでしょうか。ポイントは「最終的に専門職につなげる」ことです。つなげるためには、「気づき」「声かけ」「聴く」「つなぐ」の実践が必要になります。この4つのことば、ラインケアの視点からは言い古された言葉ですが、非常に大切な言葉と感じています。ひとつひとつ、見ていきましょう

「気づき」

診断基準や症例が豊富に頭に入っており、不調に「気づく」ことができれば越したことはないですが、管理職はもちろん専門医でもカウンセラーでもありません。では、何に気づけばよいのでしょうか。

ポイントは「いつもとの違いに気づく」ということです。日中、家族よりも長い時間を一緒に過ごすのは、実は皆さん会社の方たちかもしれません。ということは、「いつもとの違い」は家族よりも敏感に感じることは出来るはずです。そのためには、従業員の「いつも」を知っておくことが大切です。

「いつもの昼休みの様子」「いつもの作業中の様子」「いつもの会議中の様子」

改めて頭の中に入れておくことで、以下のような「いつもとの違い」に気づくことが出来るようになるはずです。

■勤怠面

・休暇、欠勤、遅刻が目立つ

・仕事が遅くなる

・ミスが増える

・仕事の効率が低下する

・仕事に自信を失い自己卑下する

・会議などで口数が少なくなる

・自発的な発言が少なくなる

 

■身体行動面

・元気がない

・新聞、本などを読まなくなる

・冗談を言ったり笑ったりしなくなる

・昼食をあまり食べなくなる

・よくため息をつく

・無精ひげを伸ばす

・服装に無頓着になる

・イライラする

 

「声かけ」

いつもとの違いに気づけた、ということは「予見可能性が高まっている」ということができます。だとすれば「結果回避義務」の履行が必要になります。職場であれば、本人の様子(情報を得る)を具体的に聴き取らないといけません。

ここで必要になるのが「声かけ」です。「プライベートなことかもしれないからそっとしておいてあげよう」ではだめですね。では、どのように声をかければよいでしょうか?

 

「おい君、何だが最近落ち込んでるな。うつ病じゃないだろうな?大丈夫か?」

 

皆の間で大きな声でこのような声掛けを受ければ「○○ハラスメントではないですか?」と言われかねないですね。大切なことは、相手の体調を気にするスタンスで、内面ではなく外に出ているいつもとの違いを指摘してあげることです。身体面、勤怠面の視点から次のような声掛けを意識してみてください。

■身体面

・夜中や早朝に目が覚めることはないか

・体がだるく、疲れやすいことはないか

・食欲がなかったり、下痢や便秘になっていないか

「最近疲れているみたいけど大丈夫かい?」

「昼休み仮眠取っているようだけど、寝不足かな?」

「最近昼飯食べてないようだけど、具合悪いのかな?」

「服装や身だしなみが少し乱れてきてないか?」

 

■勤怠面

・出社時間が遅くなる、遅刻が増える

・当日の有給申請や申請なしの欠勤が増える

・勤務中に眠気や集中力の低下がある

「遅刻や早退が目立つようだけれど、大丈夫か?」

「勤務中の眠気が強いように感じるよ。寝不足かい?」

「会議中、上の空に感じたけれどどうかしたか?」

 

【声かけをしたのに、「大丈夫です、ありがとうございます」で終わってしまったら・・・】

ラインケア研修でよくいただく質問です。いつもとの違いから、「気づき」せっかく「声かけ」したのに、このように言われると、どうしたらよいのでしょうか。まずは、あなたのことを気にしていることを伝え、外から見た変化として伝えてあげてください。

 

「そうか。ただ、自分で大丈夫と感じていても、 知らず知らず体からサインが出ていることもあるよ」

 

「ここ数日勤怠が乱れている」「職場に来ても突っ伏して寝ている」「仕事の能率が急激に落ちた」など、より高い予見可能性を感じる場合には、以下のような対応も私はありだと思います。

 

「私には、皆が健康で仕事してもらえるように配慮する義務もあるんだ。一度、産業医や保健師、あるいはカウンセラーと面談してみてはどうだろうか。これはお願いというよりも、指示として聞いてくれ。」

 

予見可能性が高い場合は、より高度な結果可否義務が課されます。上司自ら産業医面談を予約することも必要な場合があるかもしれません。

大切なことは「つなげる」ことです。声掛けする上司との関係性で問題が発生しているような場合には、関係が出来ている方からでも良いと思います、積極的な声掛けをお願いしたく思います。

次回は「聴く」「つなぐ」についてお話しさせていただきます。

株式会社ヒューマン・タッチ 代表取締役 臨床心理士 公認心理師
通算500社以上のコンサルティング、900件以上の復職面談、年間100件以上のセミナーをこなすメンタルヘルス対策専門コンサルタントです。
メンタルヘルス対策の仕組みづくり、個別休職復職支援、ラインケアセミナー、セルフケアセミナー、全員面談、ストレスチェック、職場環境改善、災害・自死等の危機対応など、「こころ」の視点から、「いきいき職場づくり」をトータルに支援いたします

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