ハラスメント事案の事後対応~相談者側の視点から~
ハラスメント事案の事後対応~相談者側の視点から~
ハラスメント事案が発生した際に、多くの企業が調査・判定・事後措置等の対応にあたっておられることと思います。
今回はハラスメントを受けたことを相談した方(以下、相談者)の視点で、事後対応について考えていきたいと思います。
相談者の方々の中には、相談の時点で心身の不調があるケースや、休職がきっかけで事案化したケース等もあります。
そうした場合は、ハラスメント事案としての対応と併せて、産業保健スタッフによるケア等、
メンタル面のフォローアップが行われているかと思います。
また調査の結果、ハラスメントに認定されたケースである場合は、
相談者に対して、一定のフォローアップを行うこともあるかもしれません。
しかしご存知の通り、ハラスメント事案が生じたとしても、全てのケースがハラスメント認定されるわけではありません。
特にパワハラの場合は「マネジメントとしては問題ありだが、パワハラとまではいえない」という判断になることもありますし、
職場のいじめや嫌がらせの場合は、「職場の人間関係の問題はあるが、ハラスメントとまでは明確に示されなかった」
というような判断になるケースも多いのではないでしょうか。
「ハラスメントとまではいえない」と判断された場合、再発予防の措置を講じたうえで、一旦、対応が終了します。
この時点で相談者にメンタルヘルス不調がみられない場合は、相談者への対応もその時点で終了し、
特にフォローアップが行われないことがほとんどかと思います。
企業としては一定の基準をもって調査・判定をし、事後措置等の一連の対応が終了していることではあるのですが、
相談者の立場からすると、それで済んだことにはならず、気持ちの整理がつかない状態が続くことになります。
相談者のなかには、長いあいだ相談できずにいたという方もいらっしゃいますし、調査すら躊躇われることも多くあります。
何等かの傷つく経験があり、悩んだ末に覚悟や勇気を持って相談されます。
結果的に認定されなかったとしても、相談者にとっての「傷ついた」という事実は変わることはありません。
このような状態が続くと、時間の経過とともに納得いかない気持ちが増幅され、
長期的なパフォーマンス不良に陥る場合や、離職に至るケースもあります。
また企業側が手順に沿って対応していたとしても「相談したのに会社は何もしてくれなかった」
という気持ちが募り、企業側とトラブルになるケースも散見されます。
こうしたことからも、特にハラスメントと認定されなかったケースについては、
相談者にとっての影響や気持ちの揺れ動きに充分に配慮することが求められます。
また調査の進行に支障を来さないタイミングを計りながら、相談者の気持ちの整理や、
パフォーマンス維持のための支援を検討することが必要と考えます。
そのためにもなるべく早い段階から相談者と関わり、専門家による心身の状態の確認も含めたフォローを行なうことが望まれます。
(シニアコラボレーター 伊東 あづさ)
キューブ・インテグレーション株式会社 シニアコラボレーター | |
公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタント
【専門領域】産業精神保健、復職支援、認知行動療法、コーチング 外食企業にてマネジメントを経験後、飲食店不振店再生プロジェクト等に携わる。その後大手コーチングファームにて、管理職層のリーダーシップ開発等を目的としたコーチング、研修講師等を担当する。現職では、メンタル不調者への面談や復職支援等を担当。 |
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