体調管理、従業員任せで大丈夫ですか?
メンタル不調疑いのある若手社員・Aさんの対応をしている弊社心理士から「保健師も一度面談してもらえないか」という依頼がありました。
Aさんは、なんだか疲れやすい、気力がない、立ち眩みといった症状があり、パフォーマンスが低下するなど仕事にも影響が出ているということで心理士に相談に来ていました。
保健師が生活面を中心に話を伺ったところ、昨年の健康診断で生活習慣病の一歩手前だったこと、その状態を改善するためにかなり食事制限をしており、1年間で急激に体重が減っていたこと、がわかりました。食事量を減らして検査の数値が改善していたのはよかったのですが、その頃から疲れやすさや気力の低下、立ち眩みというような症状が出てきていることが分かり、食事制限のし過ぎで必要なエネルギーや栄養素が足りていない状態による不調ではないかと考えました。
1日に必要なエネルギーや身体を維持するための栄養素などを説明し、日頃の食生活を一緒に振り返ると、「良かれと思ってやっていたけど、やりすぎはだめですね。」ときちんと食べる必要性を理解していただけました。
その後定期的に面談をしていますが、体調は回復傾向で、仕事も問題なく勤務できています。
また、別の企業においては、人事や上司から「入社して間もない頃から休みがちな社員(Bさん)がいる。体調を崩しがちなのはメンタル不調なのかな。」との相談を受けました。
Bさんと面談をしてみると、「もともと体力がないんです。だからなのか、疲れやすいのは確かです。朝も弱いし…。」と、体質等生まれつきだから仕方がないと考えていました。また、食事について確認してみると「ちゃんと食べてますけど…。」というものの、実際には必要な栄養が取れるだけの食事量ではなく適度な運動習慣もほとんどないような状況でした。保健師との対話を通してBさんは「自分ではできているつもりだったけど、足りてなかったんですね。」と気づき、その後は体調不良で休むことが徐々に減っていき、仕事にも前向きに取り組めるようになったとのことでした。
いずれのケースについても、専門家が個別に丁寧なヒアリングとアドバイスをすることで体調の改善につながり、
仕事にもよい影響が出ています。
「健康管理の一環として健康診断を毎年やっているんだから大丈夫じゃないの?」と思われるかもしれません。
ですが、健康診断でこういったケースに気づくことができるかというとそうでもなく、Aさんは数値が改善しているため、要指導の対象外となる可能性が高いですし、Bさんの何となく体調が悪いという状態を健診結果から判断するのも困難です。
また、Aさんのように良かれと思ってやっていた食事制限が実は逆効果になってしまっていたり、Bさんのように体調がよくないという自覚があり、自身でもきちんと体調管理をしているつもりであったものの、実際には改善には結びついていなかったりと、自己流の体調管理ではかえって状態が悪くなってしまうこともあります。
生活習慣がプレゼンティーズムに影響を及ぼすといった研究結果も出ていることからも、従業員の方々が十分にパフォーマンスを発揮できる健康管理の方法として、法定の健康診断だけでなく、プラスアルファで、よりよい生活習慣を作ることができるようなサポートがあると心強いのではないでしょうか。
さらに、一度身に付いた習慣を変えるというのは困難であるということやより良い習慣を早いうちに身に付けてほしいということを考えると、社会人として歩み始め、新しい生活習慣が始まったばかりである若手社員のうちに策を講じることが望まれます。
(シニアコラボレーター 田口 朋子)
キューブ・インテグレーション株式会社 シニアコラボレーター | |
保健師
【専門領域】産業保健 病棟看護師や教職に従事した後、保健師として特定保健指導受託企業に転職。現在は産業保健師として企業の健康経営と社員の健康管理支援を行っている。 |
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