メンタル不調者の早期発見/早期対応 ポイントは事例性
メンタルヘルスの担当者から「メンタル不調の早期発見/早期対応したいけど、実際は発生してからの対応になり、気づいた時には症状が重くなっていて、回復に時間がかかるケースが多い」というお話を聞きます。
このようになる経緯として次の2つが考えられます。
1、現場の管理職がメンタル不調のサインがわからず気づけなかった
2、現場の管理職が気づいていたが人事への報告が遅かった
1はメンタル不調の兆候やサインがわからず、かなり悪化した状態で自己申告によって判明するため発見が遅くなり、人事に相談がきた時点では症状が重い状態になってしまっています。
2は前々から気づいていて実は現場で対応していたけど、どうにもならなくなった段階で人事に相談してくるため、やはり症状が重い状態になってしまいます。
いずれも人事またはメンタルヘルスの担当者が把握するタイミングと対応が遅れてしまうため、結果的に長期化することになります。
この状況を解消するためには、人事から管理職に対して何をするように伝えたらよいでしょうか。
メンタル不調の可能性に早い段階で気づくポイントは2つあります。
・事例性から気づく(疾病性から見つけようとしない)
・部下の変化をキャッチする(その事例性はある時期から観察されるようになったかどうか)
「メンタル不調の部下がいたら早めに気づいて教えてください」というと、
多くの管理職は「体調が悪そうな人」がいたら報告しようとします。
これは疾病性に注目した捉え方です。
しかし、早期発見するのなら事例性に注意を向けておくことが必要となります。
疾病性、事例性とはメンタル不調の対応を考えるときによく出てくる言葉です。
疾病性は「うつ病が疑われる」「意欲低下がみられる」といた症状や病名に関することです。一方、事例性とは職場でみられる困りごとを指し「締め切りを守れない」「遅刻する」といった客観的具体的な事実を指します。
医療の知識がない人が職場で体調不良、メンタル不調の症状に気づくことは難しいですが、事例性は職場や業務遂行に支障が出ている場合が多いため、管理職や周囲の人も気づきやすいでしょう。
例えば、「これまであまり休まなかった部下が体調不良で当日急に休む回数が増えた」という事例性で考えてみましょう。
当日の朝いきなり休む、というのは予定していた業務を変更することになり、職場に多少影響がでます、また、ときには困ることもあります。
これが何度もあるということは何か原因があります。
本人と話しても原因がはっきりせず、メンタル不調の可能性を除外できないときには人事に相談することも有効です。そこから専門家に繋いでメンタル不調の有無を判断して適切な対応が取れるからです。さらに事例性の原因に会社責任が関連していると会社がとるべき対応が異なります。対応を誤るとトラブルのリスクが高まりますが、原因を早い段階で明確にしておくことで、リスクを最小限にすることができます。会社責任の有無は現場の管理職だけで判断せず、人事やメンタルヘルスの担当者に確認する必要があります。
しかし、人事に相談しようとしても管理職が難しいと思うことがいくつかあります。
ひとつは「何度か急に休んだら…というのはどのくらい?」という発生頻度です。
これは主観的になりがちなので、繋げる目安を示すとわかりやすくなります。
急な休みに関しては体調不良を理由にしたものであれば月3日発生したときは専門家から見て要注意です。
つぎに「月3日、急な休みがあったら全部報告するのか?」ということです。
先ほど原因がはっきりせず、メンタル不調の可能性を除外できないときには人事に相談するとお伝えしました。
体調不良になった理由が明確にわかっている場合、例えば、インフルエンザだった、胃腸炎になった、前日外で激しい運動して熱中症になった、など、そのようなケースは必ず報告しないといけないということではありません。可能性の段階でメンタル不調の有無を確認することができると重症化、長期化を防ぐことができます。
このように具体的な事例性と人事に相談するタイミングを管理職に伝えることができると早期発見/早期対応の体制をつくることができます。
それでもタイムリーに人事に共有されない場合は、人事への不満や不安、管理職個人の課題が阻害している可能性があります。今回は詳しく触れていませんが、それについては別の施策やアプローチを考えていく必要があります。
メルマガでは「当日の急な休み 」を例に挙げましたが、その他にもメンタル不調を疑う事例性というものが いくつかあります。
こちらの詳しい内容と報告の目安(どのくらいの割合で観察されたら人事につないでもらうか)については勉強会でご紹介しますので興味のある方はご参加ください。
キューブ・インテグレーション株式会社 コラボレーター | |
公認心理師/臨床心理士
【専門領域】産業精神保健、認知行動療法、臨床行動分析、復職訓練、ストレスマネジメント 大学院修了後、精神科、カウンセリングオフィス、大学病院にて心理検査、認知行動療法を主とした心理面接、集団認知行動療法に従事する。その後、精神保健福祉センターのディケアで生活支援や就労・復職支援に携わる。復職訓練、社内カウンセリングに従事。 |
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