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専門家コラム

ストレスチェック集団分析を活かす

2023-12-25 テーマ: 人事支援

「ストレスチェック集団分析をメンタル不調者の早期発見・早期対応に活かすには」

 

2015年12月のストレスチェック導入から丸8年が経ち、昨今では、ストレスチェックの質問項目数を増やすことで、

エンゲージメントやハラスメント、上司のリーダーシップ等に関する詳細な情報を収集して、集団分析している企業も増えています。
一方で、人事の方からは、
「分析結果をどう現場にフィードバックし、メンタルヘルス施策に繋げるか、正直課題がある、難しい」
というお声を頂くことがあります。

ストレスチェックを早期発見・早期対応に活用するには、定量データのみを分析するアプローチでは限界があります。
総合健康リスクや高ストレス者割合が高い、高ストレス職場の懸念がある部署に対しては、
部署面談の実施、すなわち、従業員層と管理職層へのヒアリングを行い、定性データも収集することが有効です。
部署面談を実施するメリットとして、具体的に下記3点が挙げられます。

1、従業員層へのヒアリングを行うことで、該当部署のより詳細な課題分析ができる。
部署内に課題がある場合、従業員層は「人事や上層部に現状を把握してもらいたい」と考えていることも多いです。
外部の専門家によるヒアリングであれば、匿名で意見が伝えられるという安心感から、組織に対する様々な意見が出てきます。
面談を通して、従業員の生の声を吸い上げ、より詳細な実態が把握できると、
職場のストレス要因が仕事の量、質、人間関係のどこにあるのか、背景にある要因は何なのか等が見えてきます。
その結果、人事と現場上司、上層部が連携して、より効果的な対策を考えやすくなります。
また、ヒアリングを行なうこと自体が、「会社が現状を把握し、施策を打とうとしている」というメッセージになります。

2、管理職層へのヒアリングを行うことで、現場上司のサポートにつながる。
課長職相当の現場上司の方は、組織結果が悪かった責任や何か追及されるのではという不安から、
警戒感をもって面談に臨まれる印象があります。
一方で、組織課題は必ずしも職場レベルで解決できる問題ばかりとも限りません。
現場上司が何に困っていて、どう対策しているのか等を伺った上で、今後の課題解決を上司のみに任せるのではなく、
人事や上層部等も含めて一緒に対応していくというメッセージを伝えることは、良好な協力体制を築くためにも重要と思われます。
また、面談の中では、上司の方から要懸念者の話を伺ったり、
ラインケアをする上での難しさ等のご相談に応えることもあります。
専門家視点での見立て、助言を伝え、今後の職場での対応上の留意点や事例性/疾病性の役割分担の確認ができると、
上司にとっては安心感に繋がると思われます。
ラインケアのサポート体制は、常日頃からできていることが望ましいですが、ストレスチェック後部署面談をきっかけとして、
高ストレス職場となっている部門の上司のサポートを重点的に行うことは、
不調者の早期発見・早期対応、上司の負荷軽減のためにも大切と言えます。

3、要フォロー者の把握や早期相談につながる。
面談では、組織課題への意見を確認するだけでなく、各従業員の業務負担感や体調等も同時に確認します。
不調が気になる従業員について、上司からのみならず、同僚から見た情報も収集できると、
部署内の業務の偏り等、不調の背景にある要因をより立体的に考えることができます。
そして、心理士が面談する場合は、従業員に不調の懸念がある際、本人の了解を得た上で、
部署面談後もフォローを継続し、上司や産業保健スタッフと連携しながら対応していくことが可能となります。
また、面談時点では、特にフォローが必要ない従業員も、
自身の生活上の注意点を確認できたり、どのような時に相談すべきか等、
相談のイメージが持ちやすくなり、セルフケア意識の向上に繋がる可能性があります。

このように、ストレスチェック後の部署面談は、定性データを得て組織課題を浮き彫りにする目的に加え、
不調の未然防止や早期発見・早期対応という点でも効果が期待されます。
ストレスチェックの実施とメンタル不調者の早期発見が必ずしも結びつかない実感をお持ちの人事の方は、
ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

 

                                                     (シニアコラボレーター 佐川 由紀)

キューブ・インテグレーション株式会社 シニアコラボレータ―
臨床心理士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント 【専門領域】産業精神保健、ストレスマネジメント、認知行動療法、リラクセーション(ヨガ)
公立大学付属病院精神科デイケア、心療内科クリニックデイケアを経て、精神科クリニック外来業務、教育相談課スクールピア事業に従事。その後、EAP事業会社にてカウンセラーとして従業員からの相談、研修業務に携わり、企業のメンタルヘルスケアを支援。

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