
Case_14 退職者を出さないためのチームマネジメント
当社は法制化もあり、メンタルヘルス対策の一環として、ストレスチェックを実施しています。人事部としては、個々の従業員の結果を見ることはできませんので、希望者には人事を介さずに相談利用ができる運用にしています。全体結果を元に、全社傾向や部署別での組織傾向を分析したところ、ストレス度の高い部署が散見され、その中の多くは「上司の支援が低い」ことが明らかになりました。
人事担当者としては、日々部署の様子を聞いているので、その話とリンクしているところがないか考えてみたところ、上司の支援が低いという結果が出たいくつかの部署で、退職者が出ていることに気がつきました。
上司の支援が低いという結果が、必ずしも退職に直結しないかもしれませんが、考えられるのは、いわゆるプレイングマネージャー、管理職自身が多くの仕事を抱えているために部下に目配りができず、フォローに手が回らなかったり、先輩が後輩をきちんと指導していなかったり、といったことでしょうか。あるいは、上司からハラスメントや、それに近い対応をされていることが原因になっているケースがあるかもしれません。
その一方で、何人かの管理職からは、「部下が何を考えているかわからない」「積極性が足りないので指導してみたら、翌日から休みがちになった」など、指導が難しい部下についての相談や報告も上がってきており、現場では対応に困っていることが想像されます。
ハラスメント教育は実施予定があるのですが、上司の支援を改善することにつながる教育プログラムはあるのでしょうか。なんとか、若い人材の退職を食い止め、業務への支障を最小限に抑えたいのですが、何かよい手立てはないものでしょうか。
■こころの声■
- はっきりいって、上司と部下どっちが原因かはケースバイケースですよね。
- 上司のマネジメントスキル不足によって優秀な人材が流出するのは社にとって損失でしかない。
【対応の考え方】
<ストレスチェックが課題の早期発見につながる>
離職率とストレスチェックの結果に関連があるかもしれないという仮説を立てたことは、本事例の人事担当者が、日頃から問題意識を持って仕事されているからこそ、できたことだと感じました。アンテナの張り方が素晴らしいですね。
退職の要因にはさまざまなものがありますが、上司の支援の不足だけでなく同僚の支援の不足や、裁量権不足、業務とのミスマッチなどが考えられます。ストレスチェックは定期的に実施し、それぞれの要素について組織分析することで、課題の早期発見に役立てることが期待できます。
<管理職のマネジメント能力をアップする>
管理職のマネジメント不足が原因で退職者が多いと懸念される場合は、確かに対処が必要です。
マネジメント能力を向上させるには、管理職研修を企画し、チームビルディングについてスキルを学んでおくことをおすすめします。目的を持ってチーム(部署)になり、目的達成までのアプローチを考えるとき、意見のぶつかり合いが起こるのは当然です。これを「混乱期」と呼びますが、この混乱期について理解した上で業務できるよう支援しましょう。管理職が、混乱期に翻弄されずにいかに乗り切れるか、これは企業の生産性向上にも影響します。さらに、部下を上手に褒めたり叱ったりできるように、実践的な部下指導の研修も組み合わせると、混乱期を乗り切るためのマネジメント能力アップにつながります。
<改善施策としてオンサイトカウンセリング(訪問カウンセリング)を実施>
ストレスチェックの結果が悪く、その原因となった回答をしたのは誰なのかを探すような、犯人探しが行われてしまうと、その後のストレスチェックで従業員が本当のことを回答しなくなる恐れがあります。逆に、結果が悪かったことを真摯に受け止め、改善のための施策がとられることがわかると、受検率、正答率の上昇が期待できます。ある部署で、上司の支援が低く、退職者が多い場合には、ハラスメントが行われている可能性がありますが、検査結果だけでは判断できません。状況把握と従業員ケアの一環として、気になる部署メンバーに対してオンサイトカウンセリング(訪問カウンセリング)を実施して、部署の状況を把握することも対策の一つとして考えられます。
文責:保健同人フロンティアEAPコンサルタント
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