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専門家コラム

精神障がい者の業務マネジメントのポイント

2021-04-01 テーマ:

精神障がい者の就職件数は毎年増加していますが、その一方で他の障がいと比べて

1年以内に離職してしまう割合も高いことが言われ、雇用管理をどのように行って
よいか苦慮している人事担当者も多くいらっしゃると思います。
離職の要因は様々ですが、心身の不調による理由以外に、業務に適応できず離職する
ケースも多く聞かれます。
今回はそうしたリスクの軽減に繋がる精神障がい者の業務マネジメントで心がけたい
ポイントについて考えていきたいと思います。

 

①業務指示は正しく理解できているかどうかを確認する

精神障がい者を雇用している現場では、蓋を開けてみると指示通りのアウトプット
になっていなかったり、手順が抜け落ちていたといったケースをよく耳にします。
その時の体調の影響が及ぼしている場合もありますが、こうしたことが断続的に生
じている場合は、精神障がいの特性により、口頭による指示内容のイメージづくり
がうまくできていなかったり、指示内容の誤解や一部を聞き落としてしまっている
といったことが要因となっていることもよくあります。
新たな業務を任せる際は、一般的には口頭で伝えるような指示内容においても、
一度手順を具体的に示し、実際にその場でやってもらい、実際に指示通り遂行でき
るかをチェックしていくと結果的に初歩的なミスの予防となり、双方の負担が軽減
されていきます。そこまで手間がかけられない場合は、手順やポイントを復唱して
もらったり、本人が書いた業務手順のメモをチェックするなど、正しく業務内容を
理解しているかを確認していくことで理解の齟齬の溝を埋めていくことができます。
また、一般的な業務マニュアルを使用する際は、当事者目線で見ると分かりにくい
ケースもあるため、正しい手順を伝えながら本人にとってわかりやすいマニュアル
に手直ししてもらうということも有効です。

 

②業務の進捗は定期的に共有し、躓きがないかを確認していく

障がいの有無に関わらず、部下に対して「何かあればいつでも相談してください」
といった声かけをしているケースは多いと思いますが、精神障がい者の場合、
「どんな風に相談したらよいだろうか」「どんな風に聞いたらよいのだろうか」
「こんな初歩的なことを聞いてしまったら仕事ができない人間だと思われてしまう
のではないか」など、ちょっとしたことを色々と気にしてしまうという声も多く聞
かれます。
実際に困ったり気になっていることがあっても相談に踏み込むまでに逡巡してしまい、
次第に不安や悩みを抱え込んで不調を来してしまったというケースもよく耳にします。
困ったことがあれば必要に応じて応対するスタンスは勿論大切ですが、精神障がい者
は私たちが想定しないところで躓いていることも多いことから、1~2週間に1度は短
時間でもよいので何らかの面談の機会を持ち、雑談を交えながら業務の進捗の共有
とともに何か気になっていることを丁寧にヒアリングし、助言を行うことで、本人
も安心して仕事に臨めるようになるのではないかと思います(特に業務内容や職場
環境に変化があった際は必ず行いたいところです)。もし本人から困りごとについ
て語られたときは、「よく勇気をもって相談してくれたね」と相談行動に対するポジテ
ィブフィードバックをしていくと、本人の相談力の向上につながり、課題が生じて
も早期に介入・解決がはかられていくと思います。

 

③業務上のミスがあった際はソリューションフォーカス(解決志向)の対応で

業務上のミスが報告された際、「なぜそうなったの?」と原因を確認することが多
いと思いますが、精神障がい者の中にはちょっとしたミスでも必要以上に落ち込ん
でしまい、長く引きずってしまう人もいるため、まずはその報告をした行動をねぎ
らうメッセージを伝えていく配慮ができるとよいでしょう。
ミスの要因については具体的に共有し、再発を防ぐためにどうしたらよいかという
ソリューション・フォーカス(解決志向)のスタンスで具体的対策を共有し、今後
の改善に繋げていくことに気持ちを切り替えていくよう伝えていくことができると、
落ち込みから改善に向けたモチベーションにつなげることができるのでないかと思
います。

 

以上、今回は精神障がい者の業務マネジメントのポイントについて述べてきましたが、

上記のような対応をしても業務遂行に課題が生じる場合、障がい特性に伴う適性に
よりストレッチが難しい状況が生じていることも想定されます。
その場合は、適材適所の観点でより本人の得意なことや安定して仕事ができる業務
に切り替えるなど本人の能力が発揮できる仕事を通じて自己効力感を育て、余力が
できたら新たな業務にチャレンジする機会を提供する形をとっていくとよいのでは
ないかと思います。
精神障がい者の中には私たちがそれ程気にならない環境の変化でもストレスに感じ
やすかったり、常に緊張や不安を感じながら仕事をこなしている方も多いため、
ちょっとした心配りの有無が就労定着の鍵となってきます。今回お伝えした関わり
は、知識として理解されている方も多くいらっしゃると思いますが、実際に実践で
きているかについて尋ねるとやれてないことが多いという声も聞かれます。
労力のかかることも多くありますが、急がば回れの視点で関わり方の工夫をしてい
ただくことで、持続的な就業と成長が望めるのではないかと思います。

                                                   (エグゼクティブコラボレーター 中田 貴晃)

キューブ・インテグレーション株式会社 パートナー、エグゼクティブコラボレータ―
臨床心理士/精神保健福祉士/社会福祉士/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント 2009年度日本うつ病学会奨励賞受賞
精神科クリニック、障害者職業総合センター等で集団精神療法、デイケア、就労支援の他、スクールカウンセラー、千葉県医療技術大学校非常勤講師、千葉県庁健康管理室相談員を歴任。その後、EAP事業会社にて復職支援を中心にメンタルヘルス対策支援に従事。

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