
行動から見る心理学 その4
前回は、人間が行動を起こす4つの原理について、紹介しました。
今回は、4つの原理が、メリット/快感情やデメリット/不快感情を認識していないケース、
すなわち無意識の行動にも影響を及ぼすことについて、述べたいと思います。
例えば、電車通勤をしている人は、
毎朝決まって同じ車両の同じドアから乗車している人が多いと思います。
これは上記のようなメリット・デメリットを比較検討した結果そうなっているというよりも、
特に意識せず気づいたらそういう習慣になっていた、という人がほとんどではないでしょうか。
しかし、この行動も上記の4つの原理から合理的に説明することができます。
まず1日目に電車に乗る時には、
どの車両のどのドアから乗るかはほとんどランダムです。
(これは旅行先で一度も乗車したことのない電車に乗ることを考えてみるとよくわかります)
そうしてランダムに乗車した結果、降車した位置が駅の改札から最も遠い位置だったとします。
すると“出口まで遠い距離を歩かなければいけない”というネガティブな結果
(とそれに伴う不快感情)がもたらされることになります。
この結果、2日目は1日目と同じ位置から乗車するのではなく、
より降車駅の改札に近い位置から乗車するように行動が変化します。
2日目、今度は降車駅の改札に最も近い位置から乗車したとします。
すると今度は車内が猛烈な混み具合だったとしましょう。
すると、“身動き一つ取れず苦しい”というネガティブな結果
(とそれに伴う不快感情)がもたらされることになります。
この結果、3日目は1日目と2日目の間の位置から乗車するように、さらに行動が変化します。
これらを繰り返すことで、
得られるメリット/快感情と、
もたらされるデメリット/不快感情が釣り合ったところで、
毎朝の乗車位置が固定されることになります。
こうして人は無意識のうちに、行動を決定しているのです。
これら4つの行動の原理を理解し、活用していくことで、
自分自身の行動を適切にコントロールしていくことが可能となります。
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キューブ・インテグレーション株式会社 エグゼクティブコラボレータ― |
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公認心理師/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/二級FP技能士
【専門領域】産業精神保健、認知行動療法、ストレスマネジメント 臨床心理専攻。専門学校で学生の心理及びキャリア相談を担当。EAP事業会社にて、カウンセリング部長として企業のメンタルヘルス全般をサポート。約2000件の従業員への臨床に携わる。外資系会社から商社、組合・公務員団体等多岐にわたる研修を実施。 |
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