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反芻思考
[ハンスウシコウ]

「反芻思考」とは何度もネガティブな出来事を思い出し、悩み続けて抑うつ気分を増長させる考え方のことをいいます。もともと反芻とは、牛などが食べ物を消化するために一度胃に入ったものを口に戻し、繰り返し咀嚼(そしゃく)すること。ネガティブなことを何度も思い出して落ち込む行動が動物の反芻に似た反復行動であることから、反芻思考と呼ばれるようになりました。反芻思考は医学的には「抑うつ的反芻」と呼ばれており、うつ病や不安障害、強迫性障害などとも関係があるといわれています。

反芻思考のケーススタディ

反芻思考には2種類
失敗の原因が自分に向くか他者に向くか

精神医学では、抑うつ的反芻のように自らの欠点や問題点を繰り返し考えることは、危険な精神的習慣だと考えられています。イェール大学の心理学者Susan Nolen-Hoeksema氏が行った研究では、「反芻傾向」の強い人は落ち込みやすく、ストレスを感じる出来事に遭遇すると無気力状態に陥りやすい傾向があるとわかったそうです。

反芻思考は行き過ぎると、うつ病などの精神疾患にもつながる恐れがあります。日頃からネガティブなことを思い出す習慣がある人は、ストレス耐性が弱い傾向にあるため、反芻を続けているうちに抑うつ状態がどんどん深刻になり、疾患に発展するケースもあるのです。

とはいえ、失敗を振り返って考えることのすべてが、精神に悪影響を与えるわけではありません。反芻思考(抑うつ的反芻)には、「リフレクション」と「ブルーディング」の2種類があります。リフレクションは「どうして自分はこんなに失敗ばかりしてしまうのだろう」などと逡巡し熟考することで、うつ病との関係は低いといわれています。むしろ、失敗を自己分析することは、同じことの繰り返しを回避するというプラスの側面もあるでしょう。一方のブルーディングは「考え込み」ともいわれ、「もっとこうだったらよかったのに」など、周囲の状況がいかに理不尽だったかについて不満を膨らませる思考です。このブルーディングは、うつ病との関係が強いと考えられています。

反芻思考による抑うつ状態が深刻な場合は、メンタルクリニックで認知行動療法などの治療を受ける必要があります。そこでは思考の癖を見つけ出し、物事をネガティブに捉える傾向から脱する練習をします。また、それほど深刻ではない場合には、マインドフルネスを実践することも有効だといわれています。マインドフルネスは、今ここにいる自分の状態を見つめること。マインドフルネスにより自分の反芻思考に気付き、対処に考えすぎる癖や心配事から距離を置くトレーニングを行うことで、反芻思考の頻度を減らすことができるのです。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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