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集中ボーナス
[シュウチュウボーナス]

「集中ボーナス」とは、物事に取り組める時間の欠乏が、かえって集中力を高める効果のことをいいます。行動経済学者のセンディル・ムッライナタンとエルダー・シャフィールによる共著『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』(早川書房)の中で論じられました。1ヵ月先が締切のタスクより、1時間後が締切のタスクの方が集中力が発揮される。つまり、時間のない状態が集中力の向上に効果的である、と説いた論考です。

集中ボーナスのケーススタディ

集中ボーナスは一時的なドーピング
トンネリング状態に陥らないよう注意が必要

締切の決まっている仕事を引き受けたとき、質の高い成果を上げるため、あなたはどのように取り組みますか。タスクを細分化し、アクションリストに落とし込んで計画通りに実行する――。それが理想的な仕事の進め方だと誰もが理解していますが、実際にはそううまくいくことばかりではありません。

前述の書籍では、質の高いアウトプットをするための解の一つに「締切直前まで何もしない」という方法を紹介しています。時間の欠乏からくる精神的プレッシャーから、人は自然と作業に集中することができるようになります。そのため、普段とは違ったパフォーマンスを発揮することができる、というロジックです。

「集中ボーナス」の効果は、タスク管理に応用することもできます。「やりたくないこと」を、あえて時間がない状況の中で「やらなければならない」ようにするのです。例えば、家事が苦手な人であれば、その日の夜に自宅に人を招待することで、その日の朝に家事を済ませてから会社に行かなければならない状況を作り出します。

また、「集中ボーナス」は時間だけでなく、モノやお金といった別のリソースが不足しているときにも同様の効果を期待できます。例えばゴルフでは、際限なく球が与えられる打ちっぱなしよりも打ち直しのできない実際のゴルフコースの方が、一打に対する集中力が発揮されます。

しかし、欠乏は同時にマイナスの効果ももたらします。Aというものに集中するあまり、BとCの存在が頭の中からすっぽりと抜け落ちてしまう「トンネリング」と呼ばれる状態です。集中力は、目の前にあるもの以外をシャットアウトする力でもあり、時間の欠乏によって得られる集中ボーナスの代償とも言えるでしょう。

「集中ボーナス」はあくまで、精神的にも身体的にも負荷をかけることで得られるドーピングのようなもの。依存しすぎず、中長期的に物事を捉えられるよう、心に余裕を持つことが大切です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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