アウティング
[アウティング]
「アウティング」とは、本人が公にしていない「SOGI(性的指向や性自認)」を、承諾なしに第三者に公表してしまうことをいいます。SOGIは個人情報やプライバシーにあたります。それを周囲に公表するか否か、どの程度公表するかなどは本人だけが決めることができ、それを暴露する行為はプライバシー権の侵害と考えられます。当事者の悩みのレベルや考え方はそれぞれで異なり、オープンにしている人もいれば、深刻に悩んでいる人もいます。アウティングが原因で精神疾患になったり自殺に追い込まれたりするケースもあるため、アウティングは当事者を傷つける行為であることを、職場や学校で認識させていく必要があるでしょう。
アウティングのケーススタディ
「身近にいるかどうか」で、SOGIハラの認識に大きな差。
アウティングにより損害賠償責任を負う可能性も
SOGIをオープンにしているセクシュアルマイノリティはそれほど多くありません。職場でのカミングアウトを選んだとしても、必ずしも生きやすくなるわけではないからです。日本労働組合連合会(連合)が2016年に公表した「LGBTに関する職場の意識調査」によると、職場の上司・同僚・部下などがいわゆるレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルだった場合にどのように感じるかという質問において、「嫌だ」「どちらかと言えば嫌だ」と回答した人は全体の35.0%でした。同じ質問をトランスジェンダーに置き換えた場合、「嫌だ」「どちらかと言えば嫌だ」と回答した人は26.3%でした。
もう一つ、興味深い項目があります。職場において、LGBTに関するハラスメントを受けたり見聞きしたりした経験がある人は、全体の22.9%。中でも「LGBTが身近にいる」という人がハラスメントを受けたり見聞きしたりした割合は57.4%で、「身近にいない人」の14.8%と比較すると、4倍近い人がハラスメントの存在を示唆しました。この結果から、LGBTが身近にいない人はSOGIに関するハラスメントへの感度が低く、無意識的に誰かを傷つけている(または傍観者となっている)可能性がうかがえます。
アウティングも、その一つ。非当事者にとっては他愛もない情報だったとしても、それが広まれば本人にとっては精神のみならず、生命をも脅かされるほどの一大事になりうるのです。法律的にも、アウティングはプライバシー権の侵害とみなされ、慰謝料などの損害賠償責任を負うことがあります。企業もアウティングをした人の使用者として、損害賠償責任を負う可能性があります。
企業は従業員に対し、働きやすい職場環境を保つよう配慮する義務があります。研修などで従業員の意識を高めるとともに、セクハラやSOGIハラを許さない意識をトップダウンで進めていくことが求められています。