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不定愁訴
[フテイシュウソ]

「不定愁訴(ふていしゅうそ)」とは、医療用語の一種で、何となく体調が悪いという程度の漠然とした自覚症状を訴える人が医療機関を受診しても、身体の不調や不快感につながる明らかな病変が見つからない状態を言います。「頭が重い」「イライラする」「体がだるい」「よく眠れない」など、患者からの訴え(主訴)は強いものの、その内容は主観的で変わりやすく、他人が見てもわかる客観的な所見(他覚症状)に乏しいのが「不定愁訴」の特徴です。症状が一貫せず、医学的に原因を説明できないため、治療は難しく、周囲からも理解されにくいと言われています。

不定愁訴のケーススタディ

本人は不調を強く訴えるものの原因は不明
「単なるわがまま?」との誤解から悪化のおそれも

「最近、何となく調子が悪い。寝つきが悪いし、わけもなくイライラするし、そういえば以前より疲れが抜けにくくなったような……」こうした違和感や不快感は、誰にでも多かれ少なかれ心当たりがあるものですが、そのつらさはあくまで本人だけが感じる自覚症状。他人にはなかなかわかってもらえないものでしょう。にもかかわらず、それを口に出し、周囲にしきりと訴えることを、医学用語で「愁訴」(しゅうそ)といいます。

なかには、本人の訴える自覚症状がコロコロと変わったり、何種類もの身体的不調を同時に脈絡もなく訴えたりすることがあり、このような状態を特に「不定愁訴」と呼びます。

「不定愁訴」は、特定の病気を指す言葉ではありません。むしろ医療機関で十分な診察や検査を受けても、本人が強く訴えるような痛みやだるさなどの身体症状の原因が見つからず、明確な診断がつかないのが「不定愁訴」と呼ばれる状態の特徴なのです。

「不定愁訴」は、何となく体調が悪いという程度の漠然とした自覚症状から始まり、次のような多岐にわたる身体症状を伴います。倦怠(けんたい)感や動悸(どうき)、皮膚のかゆみなどの全身症状/耳鳴りや味覚異常などの感覚器の違和感/食欲不振、便秘、下痢/肩こりや手足のしびれ、冷え/ひん尿、血尿、月経不順/息切れ、めまい、頭痛、不眠などです。

本人のライフスタイルの問題や環境変化、精神的なストレスなど、さまざまな要因が絡み合って引き起こされると考えられ、最近では自律神経失調症と診断されることも少なくありません。軽度のうつ病や適応障害、全般性不安障害といったメンタルヘルス不調とのつながりや、他の病気の初期症状の表れである可能性もあるといいます。また、更年期には、ホルモンバランスの乱れから不定愁訴を来しやすく、更年期の女性の60~70%は上述の症状を経験していると言われています。

いずれにせよ、本人からすれば、さまざまな症状に悩まされていることは確かであり、つらいからこそ、周囲に訴えずにはいられないのでしょう。にもかかわらず、原因がはっきりしないために、また周囲への訴えが時に強すぎるために、職場などでは「適当にわがままを言っているだけ」と誤解されやすく、適切な対応がとられないケースも見受けられます。周囲の理解不足が、背景に潜むメンタル不調をさらに悪化させる可能性もあるので、注意が必要です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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