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心理的安全性
[シンリテキアンゼンセイ]

「心理的安全性」とは、英語のサイコロジカル・セーフティ(psychological safety)を和訳した心理学用語で、チームのメンバー一人ひとりがそのチームに対して、気兼ねなく発言できる、本来の自分を安心してさらけ出せる、と感じられるような場の状態や雰囲気をいう言葉です。米グーグルが2012年から取り組んできた労働改革プロジェクトの結果が16年に公表され、この「心理的安全性」をチーム内に担保できるか否かが生産性向上のカギと報告されたことから、にわかに注目を集めています。

心理的安全性のケーススタディ

グーグルが社内で見つけた生産性向上のカギ
働き方より雰囲気、一歩間違うとぬるま湯に

作家でジャーナリストの小林雅一氏がThe New York Times誌の記事をもとに「現代ビジネス」Web版に寄せた記事(2016年3月10日付)によると、米グーグルは2012年から「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれる、生産性向上計画を実施したそうです。対象は社内でさまざまな業務を担う、数百にも及ぶチーム。同社の人員分析部が、社員同士のコミュニケーションを中心に、各チームの仕事ぶりを徹底的に観察して分析し、「より生産性の高い働き方」を提案するのがプロジェクトの目的でした。

グーグルが得意なはずの分析作業は、思いがけず難航しました。というのも、チームの働き方そのものやメンバー構成などに関しては、生産性の高いチームに共通する目立った要因が抽出されなかったからです。最終的に導き出された“解”は、「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」といったメンタルな要素の重要性であり、それによって醸成されるチーム内の「心理的安全性」と呼ばれる概念でした。

「心理的安全性」とは、こんな発言をしたらリーダーからにらまれる、他のメンバーにバカにされるといった不安を持たず、本来の自分を安心してさらけ出し、それが受け入れられる場の雰囲気をいいます。同プロジェクトでは、そうした環境が担保されているチームほど高い生産性を発揮している、と結論づけました。

近年、職場内での雑談が社内コミュニケーションや情報共有を円滑にし、生産性向上に有効に働くといった趣旨の研究結果をよく耳にしますが、これもコミュニケーションだけが要因ではなく、そもそも雑談が活発に行われるような職場は「心理的安全性」が高く、遠慮なくモノが言える、本来の自分をさらけ出しても受け入れてもらえるという安心感が、生産性向上に寄与しているとも考えられるでしょう。日本企業がまだまだ立ち遅れているダイバーシティ&インクルージョンの推進も、これがベースになければ始まりません。

もっとも、「心理的安全性」は“ぬるま湯”と紙一重。チームとそのメンバーに大きな責任や使命、ストレッチな目標が与えられていなければ、雰囲気が快適なだけに、ただの仲良しグループになりやすく、個々の働き方も現状維持に流れてしまいます。今回、グーグルにおいて、「心理的安全性」と生産性との相関関係が認められたのは、裏を返せば、同社のビジネス面での厳しさの表れと見ることもできるのではないでしょうか。

2019年5月19日~22日に米国ワシントンD.C.で開かれた「ATD 2019 International Conference & Expo(ICE)」では、心理的安全性の大家であるエイミー・エドモンソンがディスカッションに参加し、概念を深堀しました。以下はディスカッションの主なポイントからの抜粋です。

  • 心理的安全とは「Speak Up(声を上げる)できる環境をつくること」であると説くとともに、単にみなが仲良く心地良い雰囲気をつくることではなく、より率直にものが言える状態をつくることである
  • 心理的安全性はゴールではなく、イノベーションや学習のための「前提条件」
  • Empathy(共感)、Curiosity(好奇心)、Mutual Respect(相互信頼)が重要であり、尊敬されていると感じて初めてVoiceが出る
  • リーダー自身がロールモデルになり、パーパス・ミッションを示し、「『私は知らない』と言えるマインドセット」を持つことが重要

ディスカッションでは、「心理的安全性は既に構築の段階にある」とされました。誰もが声を上げられる職場を目指し、「働き方改革」の流れでも注目されていくでしょう。

※世界中の人材開発の知見が集まるイベント、ATD 2019 International Conference & Expoのレポートはこちら(心理的安全性は「コンカレント・セッションから学ぶ」に記載されています)

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