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専門家コラム

職場における精神障がいがある従業員への合理的配慮の提供

2024-05-27 テーマ:

職場における精神障がいがある従業員への合理的配慮の提供

 

障がい者の職場定着には合理的配慮の提供が重要ですが、精神障がいがある従業員に合理的配慮を提供する際、障がい・疾患に関する理解に加えてストレス原因やストレス耐性といったストレスに関する理解、ものごとの受止め方や考え方、想像力といった幅広い精神機能面への理解など、多面的に捉えていくことが必要になります。

そのため時間や対話を十分に重ねていかないと適した配慮が見えてきにくいという難しさがあるかもしれません。

そこで今回のメルマガでは職場で起こりがちなケースを2つ取り上げながら、合理的配慮を提供するときに押さえておきたいポイントについてご紹介します。

 

◎1つ目のケース 「配慮はしているけれども、思うように問題が改善しない・・」

『変化が得意ではないAさん。

入社当初は緊張と不安で体調を崩すこともありましたが、1年が経ち精神面でも業務面でも安定感が出てきました。上司はAさんと面談して業務範囲を広げることにしたのですが、その後からAさんは疲れた表情を見せるようになりました。

気づいた上司が声をかけると、「慣れれば大丈夫です」というAさんの返答であったため、負荷が高くなり過ぎないように量的にも質的にも調整しつつ様子を見守ることにしました。

しかし、業務調整した後もAさんは益々疲れた表情を浮かべています』

 

精神障がい者はストレスが体調に表れ易い人も多い為、“疲れた様子”に気づいて対応することは体調悪化や休職を防ぐために重要です。

では、なぜこのケースは気づいて対応していたのに状態が改善しなかったのでしょうか。

そこには、「上司が理解した疲れた表情の原因」と「Aさんの疲れた表情を引き起こしている原因」とに齟齬が生まれていたのです。

変化が不得手なAさんが業務範囲を広げた後から疲れた表情を見せるようになったので、「増えた業務量や難易度が上がった業務の質が負荷になっているのだろう」と、業務の量・質を調整した上司の配慮は当然のように思えます。実際にこうした状況で業務量や質が負荷になっているケースは少なくありません。

しかし、この時のAさんは少し異なりました。Aさんは、業務の広がりによって新たに関わることになった人達への緊張、「新しい業務でミスしてはいけない」という自分へのプレッシャー、業務が調整されたことへの焦りや不安、が生じて寝つきが悪くなり、疲れを溜めていたのです。疲れた表情からだけでは、ここまでのことを推し測ることは難しいですよね。

でも、何が原因になっているのかは「一人一人異なること」、またその原因も複数存在することもあるため、「推し測り切れないことがあること」を理解しておくことは、齟齬予防に繋がります。

 

◎2つ目のケース 「これまでと変わらない配慮をしているのに、問題が起きてしまった・・・」

『人の目を意識し易く、疲れが溜まると体調に影響が出易いBさん。

職場では、適度に小休止が挟めるように余裕を持たせた業務量と残業はさせない配慮を行っていました。それ以外の配慮は特になく、Bさんは正確で安定したパフォーマンスを発揮し周囲も助かっていました。

こうした日頃のBさんの様子を見ていた上司は、「部内異動であれば大丈夫であろう」と判断して配慮内容は維持することを前提に、となりの課に異動してもらう事にしました。

しかし、2か月も経たないうちに体調を崩して休みがちになり、「1か月の療養が必要」という診断書が提出されました』

 

体調管理の一つとして疲労が蓄積しないように心掛けている精神障がい者は少なくありません。日中の業務の合間の小休止も大事なセルフケアになっていたりします。このケースも疲労が与える体調への影響を理解して異動先でも業務量と残業の配慮を継続していたのですが、Bさんは要休養の状態に至ってしまいました。

何がBさんの体調に影響したのでしょうか。

このケースは、同じ部内ではありましたが、元の課と異動先の課では少し職場の雰囲気が異なっていました。元の職場は、適度に雑談が課内で交わされる雰囲気でBさんは入口寄りの端の席に座っていました。一方異動先の職場は、昼休み以外は会話の少ない静かな雰囲気でしたが、Bさんが質問したいときに話しかけやすいようにと端から2番目の席(端は空席にして)が用意されました。

こうした変化の中でBさんは、会話の少ない静かな雰囲気に緊張を高め、「どう思われているのだろう」「席を外したらさぼっていると思われるかもしれない」と、人の目を過敏に意識するようになっていきました。また一つだけ内側になった席配置も入口からとても遠く感じて、「席を立ったら目立ってしまう」という思いも湧き、小休止をとるタイミングを逸し、疲労を溜め込んでしまっていたのです。

以前の職場では小休止を自然にとることができていたため、異動によってこのような状態になることを職場だけでなくBさん自身も予測がつかなかったのかもしれません。

ただ、“人の目を意識し易い”といった障がいの特性は、「おかれた状況によっても表れ方や影響の程度が変わり得る」ということを理解しておくと、起こり易い問題を事前に把握して対策をとることに繋げられます。

 

◎合理的配慮を提供するときに押さえておきたいポイント

2つのケースでは、「一人一人異なること」、「一定ではなく状況等で変わり得ること」を理解しておくことが合理的配慮の提供を進めていく上で大切になることをお伝えしました。そして、このことを踏まえ、

(1)問題が発生していることに気づいたら、対応をとる前に本人と対話し、何が影響しているのかを確認すること

(2)環境や状況等が与える本人への影響を踏まえ、定期的に(特に変化時は)本人の状態を確認すること

が問題を未然に防ぐ、または早期に気づく上で重要になります。

とてもシンプルで基本的な事ではありますが、影響要因や本人の状態を確認する為には専門的な知識や経験を要することもあり、職場管理職が正確に理解/把握することが難しいケースも少なくはありません。

また、どのような問題が発生しそうかについて障がい者自身も見通しが立てられないこともあります。

そのため有効な合理的配慮の提供につなげるためには、対応プロセスの中で専門家を上手く活用することも重要なポイントになります。

                                                                                                                                                                                                                                                                      (コラボレーター 横山 弓子)

キューブ・インテグレーション株式会社 コラボレーター
公認心理師/臨床心理士/キャリアコンサルタント/GCDF-Japanキャリアカウンセラー 【専門領域】産業精神保健、認知行動療法
人材サービス業界にて、紹介・請負・派遣事業に従事。その後、行政機関でのキャリアカウンセリング、大学での心理相談、EAPでの復職支援・心理カウンセリング・企業内ストレスチェック運営に携わる。現職では障がい者雇用支援を担当。

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