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専門家コラム

ストレスチェック集団分析の結果を正確に読み取るためのステップ

2024-04-25 テーマ:

皆さんがすでにご存じの通り、ストレスチェック制度の事業者にとっての主な実施意義は:
・職場の問題点の把握が可能となり、職場改善の具体的な検討がしやすくなる
・労働者のストレスが軽減され、職場の改善が進むことで、労働生産性の向上など、経営面でのプラス効果も期待される
が挙げられます。(※厚生労働省『ストレスチェック制度 導入ガイド』より抜粋)

職場改善を目指すには、ストレスチェック集団分析の結果をいかに正確に読み取るかが重要となります。

しかし、現場でよくみられるのは、集団分析で良くない数値が出たときに、該当部署の管理職層に課題があると考えがちなことです。 特に、「上司支援」の数値が良くないと、その傾向が強まります。

ここでは、「上司支援」の例を取りあげ、ストレスチェック集団分析の結果をより正確に読み取るための4つのステップについて話したいと思います。

ステップ1では、ストレスチェックの該当設問を把握します。
便宜上、ストレスチェックではカテゴリー毎に数値が集計されています。そのカテゴリーがどのような設問から成り立っているか、各カテゴリーの詳細な設問を確認する必要があります。
例えば、ストレスチェックの中で「上司支援」のカテゴリーは、
1、どのぐらい気軽に話ができますか?
2、あなたが困った時、どのくらい頼りになりますか?                                                                                        3、あなたの個人的な問題を相談したら、どのくらい聞いてくれますか?
という三つの設問によって構成されています。

ステップ2では、組織構成を把握します。
例えば、組織図上の体制とプロジェクトの体制とでズレがあるというように、部署の状況によって、組織構成が実態とは異なることがあります。 そのため、部署状況を把握した上で数値を読み取ることが重要です。組織図上の組織構成と現場の組織構成の両方を把握する必要があります。
「上司支援」の場合、ここで、「上司」が具体的に誰のことを指しているのかに注意する必要があります。
該当部署の直属の上司か、上司の上司か、チームリーダーか、出向先の上司等、組織構成によって、複数人の上司がいる場合や、
そもそも上司不在の場合もあります。同じ部署でも回答する際に誰をイメージするかによって、「上司支援」の結果が異なります。
また、仕事の性質によって、1人または少人数で業務を完結していて会話の機会が少ない、テレワーク中心で物理的声掛けがし難しい、 同じ部署でも拠点が各地に散在していて繋がりが薄いといった場合は、物理的に上司支援が受けにくい環境である可能性もあり得ます。
このように組織構成によって起きうる状況を把握します。

ステップ3では、各項目間の関連性など複合的な視点で課題を把握します。
ストレスチェック(※80問の場合)で組織風土とストレスの関連性が大きいとされる<部署レベル資源>の項目に、 「上司のリーダーシップ」「上司の公正な態度」「ほめてもらえる職場」「失敗を認める職場」などの項目があります。
「上司支援」の結果とそれらの項目を併せて確認することで、課題を絞り込むことができます。

ステップ4では、定量データと定性データを統合して把握します。
ストレスチェックの定量データのスコアは平均値であるため、おおよその組織の全貌を掴むことができますが、 背景にあるプロセスや文脈までは数値から読み取ることができず、仮説に留まってしまいます。
一方で、定性データからは課題の背景、対象者の心理や性格など、数字で表すことが難しい情報を得ることができます。 「上司支援」の実態を把握するためには、従業員層と管理職層の面談でヒアリングすることが有効です。 上司の日頃の声掛けや関わりの工夫、上司部下の関係性などが見えてくることで、該当部署のより詳細な課題分析ができます。

このように、ストレスチェック集団分析結果については、課題がある項目に対して、数値だけをみて安易に判断せず、 可能な限り考えられる原因をピックアップしながら、課題分析をしていくことが重要です。
効果的な改善策については、現場、人事、専門家とともに検討することをおすすめします。
                                                                                              
                                                                                        (コラボレーター 張 磊)

キューブ・インテグレーション株式会社 コラボレータ―
公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント 【専門領域】産業精神保健、復職支援、海外赴任者支援、在日中国人メンタルヘルス支援
東京大学心理教育相談室、日本家族カウンセリング協会での臨床経験を経て、東京大学学生相談所に勤務。2011年よりEAP事業会社にて、中国におけるメンタルヘルス事業の立上げ、運用体制の構築及びEAP業務全般に従事。現在は休職者の職場復帰を支援。

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