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専門家コラム

就労可能な精神障がい者の特徴とは?採用時に見るべきポイント

2020-11-02 テーマ: 障害者雇用

精神障がい者雇用は、雇用率制度の中でも身体・知的障がい者雇用と比べて歴史的に
浅く、まだ企業内に成功体験が蓄積されていません。多くの精神障がい者に接する機
会が少ない人事担当者は、採用する際に「どのような人を雇って良いのか」わからな
い状況にあります。
今回のメルマガでは、標準的な精神障がい者の雇用事例を通して、採用時に見るべき
ポイントをお伝えします。

精神障がい者は、症状そのものだけでなく、症状から派生する性格傾向や経験値不足
などが複雑に絡み合うため、障がい・疾患名が同じであっても個別性が強い(できる
こと/できないことの振り幅が大きい)という特徴があります。
加えて、症状が固定化された障がいではないため、状態変化が出やすい(できる時/
できない時の変化が起こる)という特徴もあります。これらの特徴のため、身体・知
的障がい者のように「この業務は、このぐらいできるだろう」という共通の業務遂行
イメージが持ちにくいのです。

採用が成功した事例として、新卒採用から10年間定着し、業務の幅を広げ、活躍して
いる精神障がいの事例を紹介します。

Aは、サヴァン症候群のような特定の分野に突出した能力を発揮する障がい者ではなく
、一般的な私立大学を卒業した精神障がいの大学生でした。大学2年生の頃に、“自分
の考えが他人に漏れている”と感じ、家族の勧めにより精神科を受診し、統合失調症の
診断を受けました。統合失調症の陽性症状である「思考奪取(自分の考えを抜き取ら
れる)」「思考伝播(考えただけで周囲に伝わってしまう)」が見られ、1年間休学に
至っていることからも、精神障がいの病態としては、決して軽くありません。

採用面接時に、こういった在学中の症状や状態を知ってしまうと、人事担当者は採用
を躊躇することが多いようです。しかしながら、精神障がい者の採用時に確認すべき
大切なポイントは、病名や病状ではなく、【業務遂行】【対人関係】【生活管理】
【フィジカルヘルス】【メンタルヘルス】の5つです。Aについて、5つのポイントを確
認してみると、採用後の活躍が見込める人材であることが見えてきます。

【業務遂行】
休学後には学業と両立しながら、簿記2級を取得しており、コツコツと計画的に頑張る
力が備わっていることがうかがえます。

【対人関係】
統合失調症の場合、通院・服薬の継続が大切ですが、A自身の素直な性格、家族や主治
医との信頼関係により、治療状況が良好です。

【生活管理】
睡眠リズムを意識した生活を心掛けていることも、日々の疲労やストレスの蓄積を回
避することにつながります。

【フィジカルヘルス】
毎日の電車通勤を想定し、体力づくりを意識した生活を心掛けています。

【メンタルヘルス】
一旦体調を崩すと集中力低下が見られ、症状が再燃する可能性もあります。ストレス
耐性も高くはないため、急激な負荷には注意が必要です。

このように【メンタルヘルス】には懸念があるものの、他の4つのポイントから、体調
の波をカバーする対処方法を意識していること、療養が必要な状況となってもパフォ
ーマンスを回復する力があることが確認でき、長期的な定着の可能性が見えてきます。

実際にAを採用した企業では、Aを経理部門に配属し、入社3ヵ月後には、伝票から必要
なデータを確認し請求書を作成できるようになりました。その後、銀行振込、資金繰り
表の作成、給与の伝票起こし、帳簿作成など、Aの担当できる業務が増えたこともあり、
経理部門は3名体制から2名体制に変更しています。Aの場合「ストレス耐性の課題に対
して、本人/職場が、どこまで対処できるか」ということが、就労/雇用の継続に関わり
ます。A自身の努力だけでなく、職場もAの疲労や体調に気を配りながら、業務量を調整
していることも、10年間の雇用継続につながった要因と思われます。

今回は、標準的な雇用事例から、就労可能な精神障がい者の特徴と採用時のポイント
を紹介しました。
精神障がい者も、健常者に近い業務が可能であることをイメージできれば、雇用現場
で具体的な業務を探し出すことは難しくありません。想定した業務を行ってもらうた
めには、どんな特徴の人が適しているのか/避けるべきなのか、疾病性の部分には専門
家が関与し、役割分担することが望ましいでしょう。

(シニアコラボレーター 諏訪 裕子)

キューブ・インテグレーション株式会社 シニアコラボレータ―
臨床心理士、公認心理師、シニア産業カウンセラー 【専門領域】障がい者雇用の企業支援、精神障がい者の採用・定着・育成支援
精神科・心療内科クリニックにて、医師との協働で会社員のメンタルヘルス相談等に関与。EAP事業会社にて企業のメンタルヘルス支援に従事。現在は、企業の人事部門に対する障がい者雇用のコンサルテーション、精神障がい者の現場管理職・本人支援を実施。

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